HARUKA~愛~
ヤツは私が泣き止むまで、ずっと私を抱きしめていた。



いつかの…母の姿と重なった。


私が泣くと必ず母は私を抱いた。

母の胸にうずくまり、気が済むまで泣いていた。

私が泣いている間、母は私の頭を撫でるだけで何も言わなかった。

ただただ、今の私を受け入れてくれていた。


石澤玄希は母に似ている。


だから、だ。
だから警戒しているんだ。

やっとわかった。
いや、本当はわかっていた。


私が石澤玄希を受け入れられないのは、母の“死”を受け入れられないからだということを…。



ヤツは私が泣き止むと、左腕を力強く握った。


「はるちゃんに見せたいものがあるんだぁ。こっち来て」
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