HARUKA~愛~
私はヤツに左腕をがっしり握られ、屋上に連れて来られた。

扉をガタンと閉められ、立ち退きを封じられる。


「はるちゃん、ここからはおれの指示があるまで動いちゃいけません。まずは目を閉じて下さぁい」

「…はあ?意味分かんない」

「いいから早くぅ。おれの言うこと聞いてよぉ」


仕方なくヤツの言う通りに目を閉じる。

秋は日が沈むのが早い。

目蓋の裏は真っ暗だった。


「じゃあ、そこから離れないでねぇ。おれは離れるけど、だからって目開けちゃダメだよぉ。絶対見ないでねぇ」


見るなと言われると見てしまいたくなるのが人間の本能。

だけど、ぐっとこらえる。

見てしまったら鶴の恩返しと同じハメになってしまうから。


ヤツがゴソゴソと怪しげな行動をとっているのは聴覚で感じとった。

そのうちに準備が整ったらしく、ヤツが珍しく声を張って私に呼びかける。


「カウントダウンするよぉ。あと13秒後にスタートねぇ」

「はあ?」

「はい、スタートぉ!!じゅう、きゅう、はーち、なあな…」


私の心臓が飛び出そうなくらいにバクバク鳴った。

脈拍が急に速くなって倒れそうになる。


「ごお、よん、さん、にぃ、いち…」




何も起こりませんように!




カウントダウンの終了間際、咄嗟に頭に浮かんで心の底から祈った。















「わあ…!」


私は思わず大声を上げた。













プシューーーーーッ













ロケットが星屑の天の川を作りながら夜空へと飛んでいった。
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