HARUKA~愛~
帰宅すると、思った通り今年も手紙が届いていた。

高校生になってからというもの、毎年クリスマスに必ず届く手紙。

前には私の新たな住所と私の名前が書かれていたけど、後ろにはやはり差出人の名前はなかった。

ひとまずストーブに火をつけ、冷え切った部屋を暖めようと思ったら、とんでもないことに気がついた。

掃除をして出かけたから窓が開けっ放しになっていた。

泥棒に入られた形跡はない。

もちろん、サンタさんも来ていない。



そして、父も来ない。

新しい家族とクリスマスパーティーでもやってケーキを食べたり、チキンを食べたり、歌を歌ったりしているのだろう。

夜にはサンタクロースになって枕元にプレゼントを置くだろう。


新たな道を進んだ父を私がとやかく言うことは出来ない。

楽しいことは想像しない方が良い。

私の寿命が縮むような悲しくて苦しくてどうしようもないことをわざわざ考えるなんて、大損だ。


かじかんだ両手を必死に摩擦し、発熱させる。

少し暖かくなって手の感覚が戻る。

部屋の隅から、きちんと畳まれた毛布を持ってきて、全身を覆う。

じわじわと熱を帯びてくるのが分かって私はようやく封筒を開けた。
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