HARUKA~愛~
「そっかあ…アオハル、合格したか…。ついに俺だけだな」

「まあ、宙太くんのことだし、強運で乗り切れるよ、きっと」

「…そうだな」


宙太くんは何だか歯切れが悪い。

こういう時は普段なら茶化して笑い飛ばすのに、今日は笑顔がぎこちない。

私に先を越されたのがおもしろくないのだろうか。

宙太くんの顔色を窺おうとすると、彼はそれを遮るかのように話し出した。


「アオハル、あのさ…」

「何?」

「もし…。もし、アオハルの過去を知っているヤツがいるって言ったら、アオハル、どうする?」

「えっ…」


宙太くんの言っていることが分からなかった。

日本語を話しているのかさえ疑った。






私の過去を知っている…?





そんな人、いるわけ…ない。

誰にも見てもらえず、誰とも深く関わり合わないで生きてきた私の過去を深く知っている人なんているわけない。

私は遥奏と宙太くんと出会うまで、過去を吐露するほどの親密な関係になった人はいなかったのだから。


「アオハル…―――お前、記憶を無くそうとしたんだろ?」

「何で…―――何で、宙太くんがそのことを…」

「いい加減、向き合えよ…。―――お母さん、待ってるぞ」

「だから、何で宙太くんがそれを…」

「アオハル…本当はわかってるよな?お前が今しなきゃならないこと。アオハルが自分の手で自分自身の心にノックするんだ」













午後1時38分54秒。

時が来た。
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