HARUKA~愛~
家に帰ると真っ先に押し入れを開けた。

この前の引越の時、どうすることも出来ず、結局持って来てしまった段ボール箱のガムテープをビリビリと剥がす。

あの日に全てをしまい込み、あの日から封印されて開けられることの無かった記憶の箱…。

蓋を開けると1番上に白い封筒が置かれていた。

母から私への最初で最後の手紙で私に直接渡されることは無かった。

母が亡くなって49日の法要が済んだその日に、今は亡き祖母から手渡された。


未だに封が開けられていない黄ばんだ白地…。



読んだら母の死を認めなくてはならない。

もうこの世にはいない。

私の左手をギュッと握りしめてくれない。



そう思ったら読めなかった。

そして、楽しかった、嬉しかった、つらかった、苦しかった全ての記憶を無くしてしまいたいと思ってしまった。

そして私は母の墓に行くことが出来ずに、過去を消すため、人道に反した行動を取ってしまったのだ。



つまり…




私は過去に1度、“死”を選んだ。
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