HARUKA~愛~
時計を見ると、いつの間にか針が1から2に動いていた。

目に貯蓄していた涙を全て流し終え、瞼が重くなっていた。


ようやく落ち着いた私の視界に茶色の分厚いアルバムが飛び込んで来た。



“たいせつなおもいで”



表紙にひらがなでそう書かれていた。


ゆっくりと開くと、産毛の生えた、赤い湿疹がなんとも痛そうな赤ちゃんが目に飛び込んで来た。

次のページには数カ月前までの我が家に、初めて私がやって来た日の写真が載せられていた。


ゴロンしている写真、

初めてのお風呂の写真、

ほ乳瓶をくわえている写真、

1歳の誕生日の写真、

ハイハイしている写真、

泣いている写真、

母に抱っこされて笑っている写真、

観覧車に乗って呆然としている写真、

2歳の誕生日にいちごの丸型ケーキを頬張る写真、

砂場で遊ぶ写真、

蟻の行列に木の棒でちょっかいをだしている写真、

3歳の誕生日、ちらし寿司のいくらだけ取り除いて食べている写真、

父の仕事のバスツアーに参加した写真、

お宮参りの写真、

4歳の誕生日、雛人形の前で正座している写真、

幼稚園の入学式の写真、

運動会のかけっこで転んで泣いている写真、

玉入れで的外れな玉を必死に投げている写真、

初めてのお遊戯会で黄色のドレスを着て踊っている写真、

5歳の誕生日、指をピンと伸ばして手のひらをカメラに向けている写真…。













ここまでが私と母との思い出だった。
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