HARUKA~愛~
「ここか…」
このドアの先にいるのかと思うとやけに緊張した。
冷や汗が背筋を伝い、手汗で紙袋の取っ手がびしょびしょだった。
ふうーーっと深呼吸を1つして音を立てないよう、慎重にドアを開けた。
「…いない」
ヤツはいなかった。
せっかく来てあげたのにいないとは失礼なヤツだ。
まったく、これだから相手にしたくなくなるんだ。
いっつもいっつもにこにこ憎たらしくえくぼを作って笑いやがって…。
だから、私は気づけなかったんだ。
「ったく、仕方ないヤツ」
「ったくぅ、仕方ないはるちゃん」
―――――げっ…
驚いた反動で後ろを振り返ると、ヤツがいた。
足や手、頭にまで包帯をグルグル巻いて、まるでインド人のようだった。
そんなヤツを見たらなんだか涙も笑顔もこぼれた。
泣きながら笑って、笑いながら泣いた。
「宙太くん、言っちゃったんだね。ってことは…思い出した?」
「…うん、…全部」
ヤツは車椅子のタイヤを両手で一生懸命動かして私に近づいた。
右手を伸ばして私の左の手のひらに重ね合わせた。
「晴香、おかえり」
玄希くんはまた、笑った。
このドアの先にいるのかと思うとやけに緊張した。
冷や汗が背筋を伝い、手汗で紙袋の取っ手がびしょびしょだった。
ふうーーっと深呼吸を1つして音を立てないよう、慎重にドアを開けた。
「…いない」
ヤツはいなかった。
せっかく来てあげたのにいないとは失礼なヤツだ。
まったく、これだから相手にしたくなくなるんだ。
いっつもいっつもにこにこ憎たらしくえくぼを作って笑いやがって…。
だから、私は気づけなかったんだ。
「ったく、仕方ないヤツ」
「ったくぅ、仕方ないはるちゃん」
―――――げっ…
驚いた反動で後ろを振り返ると、ヤツがいた。
足や手、頭にまで包帯をグルグル巻いて、まるでインド人のようだった。
そんなヤツを見たらなんだか涙も笑顔もこぼれた。
泣きながら笑って、笑いながら泣いた。
「宙太くん、言っちゃったんだね。ってことは…思い出した?」
「…うん、…全部」
ヤツは車椅子のタイヤを両手で一生懸命動かして私に近づいた。
右手を伸ばして私の左の手のひらに重ね合わせた。
「晴香、おかえり」
玄希くんはまた、笑った。