HARUKA~愛~
修学旅行に行けないことは高1の頃から知っていた。


私立高校に進学することさえ困難だと思われていた私にとって、修学旅行に行けないのは仕方の無いこと、当然のことと承知してはいた。

毎月定額の積立が出来ないのは、父親のシワや白髪の数を見れば分かるし、その父親が帰って来なくなったら、尚更痛感せざるを得ない。


そうやって、自分を納得させていた。






しかし、いざ目の前に迫ってくると、心は準備していたはずなのに、誤作動を起こした。

今ももちろん、辛い。

いや、辛いとか虚しいとか寂しいとか、そんな感情よりも更に深くてドロドロとした黒い感情が私の心の核となり、渦巻いている。


笑う。

とにかく笑う。


誰にも気づかれないように…

誰にも気を遣わせないように…


笑っているしかないのだ。




「ハル、自由の女神像には最初と最後、どっちパターンで行けば良いと思う?」

「えっ…あっ…」

「はるちん、聞いてなかったの~?じゃあ、もう1回確認するね」

「あっ…ごめん」


私はここから早く出て行きたかった。

消えてしまいたかった。

行かないのにここに居続けるのはしんどい。

私のいる意味が見いだせない。

  










私は私が見えなくなってきていた。


遥奏に照らしてもらっているのに、輪郭がぼやけて見えない。

やはり自分自身が輝いていないとダメらしい。

私は居なくなることさえも出来ない。

星は燃え尽きることで夜空から姿を消す。


私には何も為す術もなく、ただ時間が過ぎるのを待つしかない。











久しぶりに長い50分だった。





ふーーーっ






溜め息の長さが私の心労を推し量っていた。
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