HARUKA~愛~
夏祭り当日。


私は母に浴衣を着せてもらって母と共に玄希くんの病室に向かった。


「こんにちは、玄希くん。いつも晴香がお邪魔ばかりしてごめんね」

「いえいえ、そんなことありません。僕、晴香といると楽しいので病室にいても退屈しないんです。こんなこと、初めてです」


何人もの大人と接する長い闘病生活の中で、玄希くんは私のクラスメートの男の子よりも遥かに大人びた物言いを身に付けていた。

それには母も関心しているようだった。


「じゃあ玄希くん、晴香のこと、宜しくね。私は担当の子たちを見なければならないから。でも何かあったら言うのよ」


母はそう言い残し、担当場所へと向かって行った。

母を見送ると、後は自由だった。

私は早速玄希くんの右手を引いて駆け出した。


「晴香、走るのだけは勘弁して!!」

「あっ…そうだ。ごめん」


心臓が弱い彼にとって走るなんてとんでもないことなのに、私はすっかり忘れていた。

それだけ玄希くんが名前の通りになってきているという証なのかもしれないのだけれど、それにしても不注意だった。

「ごめん…」

「晴香、最初何するの?」


私がしょんぼりと肩を落としたのを玄希くんはちゃんと見ていた。

私の元気を取り戻すため、咄嗟に話題を変えてくれた。


「金魚すくいだよ。私、ずっとやりたかったんだ」


私達は長蛇の列の最後尾に並んだ。
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