ヘレナにはなれない

「そっかあ……。私も、好きな人が出来れば、情熱的な台詞回しが上手くなったりするかなあ」

とにかく動揺していた私は、そんな少しずれた感想を述べた。いや、でも誰なのかと詮索するのも良くないし、素直に思ったことと言ったらやっぱりこれだったのだ。

けれど田嶋くんは、そんな私に驚くべきことを言った。

「あー、じゃあ俺にすればいいんじゃないの、恋」

「へ?……へ?」

私は間抜けな声をあげる。はじめは理解が出来なくて、でも理解してからもう一回あげた。

「だって、田嶋君好きな人いるんでしょ?私に好きになられたら迷惑じゃないの?」

「迷惑ではないよ、別に」

「ええ……??」

私は首を捻る。そういうものなのだろうか。まあでも確かに、仮に私が田嶋君を好きになったとして、田嶋君が好きな人を諦めて私と恋人にならなきゃいけないわけではないのだし、迷惑ではないのかもしれない。

でもでも、それって私に報われない片思いをしろってことなんじゃ?

……すごい田嶋君、さすが、最低男デメトリアスを演じるだけのことはある。
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