ヘレナにはなれない
「……まあ、自分の気持ちぶつけてるだけだからね」
「え?」
けれどその時、田嶋君が独り言のように返した言葉に、私はすぐに振り返ることとなった。
気持ちをぶつける……というのは、田嶋君自身の気持ち、ということだろうか?
「どういうこと……?」
恐る恐る訊ねた私に、田嶋君はにこりと微笑んだ。
「さあ、どういうことだと思う?」
「えええ……」
明らかにはぐらかされている答えに、私はいくつもの疑問符を頭の上に浮かべた。気持ちをぶつける、って、どんな気持ちを?
『……うん、してるよ。ヘレナほどではないけど、報われなさそうなのをね』
(あ、好きな人がいるって言ってたっけ……)
悩む途中。ふと思い出したのは、さっきの田嶋君の告白だった。