私の知らないあなた
 名前に優しいという漢字をもつ優斗は、
 野花の一本も手折れないようなやさしさと、
 いつも周りにいる人すべてを惹きつける輝く星のような人だった。

 優斗と出会ったのは私の大学の登山サークルと優斗の大学の山岳部が合同で登山をした時のことだった。

 木漏れ日が眩しい初夏だった。

 お嬢さま短大のその年できたばかりの登山サークルと優斗の大学の山岳部では登山スキルに雲泥の差があって、
 優斗たちにとってはピクニックのような登山だったに違いない。

 その日予定より早くきてしまった生理のせいで、私はみんなの足手まとい的存在になってしまった。

 そんななか優斗が私のお守役をかって出てくれたのだ。

 最初は私の荷物も背負ってくれる優斗と休み休みゆっくりと登ったが、結局私たちは登頂をあきらめ下山することになった。

 そしてだんだんひどくなる生理痛に私はついにその場にうずくまってしまった。
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