私の知らないあなた
 優斗が子どものころDV被害を受けていたような話を本人の口から聞いたことはなかった。

 優斗の両親は二人とも穏やかで優しいときの優斗そっくりでとてもそんなことをする人たちには見えなかった。

 ネットでDVについて調べた。

 優斗に当てはまるものもあったがどちらかと言えば多くは違っているように思えた。
 
 優斗をあきらめたくなかった。

 優斗は治らないDV男なんかじゃなくて、今は何か辛いことがあってこんなふうになっているだけ。

 きっと治る。

 こんなことで優斗を見放してしまうほど私の優斗への愛は小さくない。

 そんな私は読めば読むほどDV男と別れられない女の特徴すべてに当てはまっていた。




 梅雨も終わりに近づいた蒸し暑い日曜の午後だった。

 私が作った昼食に優斗はキレた。

 料理の盛られたプラスチックの皿を床に投げつける。

 この頃になると以前あったガラス製の食器はすべて割れてなくなり、優斗自身が割れないようにと新しくプラスチックの食器を買ってきていた。

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