私の知らないあなた
「雫がもっと登れるようになったら、いつか二人で雪山に行こうか」

 優斗の語る白い世界に私は胸を膨らませた。

 私の夢は好きな人と結婚してその人の子どもを産むことだった。

 古くさいと思われそうで普段はそのことは黙っていた。

 訊かれるとその時その時思いつく職業を口にして、それになるのが夢だと嘘をついていた。

 頭のいい優斗はそんな私の嘘をすぐに見抜いた。

「専業主婦も立派だよ。雫が一番なりたいものになればいいんだよ」



 優斗は私の全てになった。

 いつしか私の夢は優斗と結婚することになっていた。

 こんな私は重いだろうか?

 知られたら優斗は逃げてしまうだろうか?



 不安になった。



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