私の知らないあなた
 優斗の部屋に自分のバックを取りに戻る。

 さっきは気づかなかったがダイニングテーブルの上に組み立て途中のクリスマスツリーが置いてあった。

 優斗のお母さんが?

 でもお母さんだったらこんな風に途中で投げ出して放って帰るはずない。



 優斗なんだ。

 優斗がこれを飾ろうとしていたんだ。

 ついさっきまで、きっと私のために。


 涙が止めどもなく溢れた。

 わけの分からないことをわめき散らす優斗は人ではない違う生き物のように見えた。

 それでもその少し前までは無気力の陰性症状と戦いながらも、がんばってツリーを飾ろうとしてくれた優斗がいたのだ。






 神さま。






 私は心の中で叫んだ。



 この困難を乗り越えろと言うのですか。

 優斗はそこに行かなければいけないのですか?

 もし、もし乗り越えられなかったら優斗はどうなるのですか?
 
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