プレシャス~社長と偽りの蜜月~
私はガゼボのベンチに腰を下ろして日が暮れるのを眺めていた。


相合傘の中に書かれた私と雅人の名前を指でなぞる。


記憶は全部失ったけど、アルバムの写真の中に私と雅人の想い出が沢山詰まっていた。


―――――幼い私は雅人に恋をしたんだと確信した。

写真の中の雅人は素敵な人だったから・・・


「ここに居たのか…どこに行ったのかと思った・・・」

スーツ姿の雅人がカゼボの中を覗き、私の姿を見つけた。


「仕事はどうしたの?」


「仕事よりもお前とお腹の子について話がしたくて早退して来た・・・」


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