プレシャス~社長と偽りの蜜月~
宿泊先は相良家の別荘。

鎌倉は日本有数の観光地であり、豊かな自然に囲まれた場所。
東京から程よい距離にある通年型の別荘地だった。

その言われは古く明治から昭和初期へと遡るらしい。
当然庶民には届かない特別な人達だけの集う所だった。


古くからの別荘地だが、街中にあるはずの電線や電柱と言ったライフラインは地下に埋設されていた。
広々とした整備された道路。
沢山の別荘が並んでいた。
相良家の別荘はその一角にあり、玄関に続くアプローチは緑に囲まれて優しい木漏れ日に溢れていた。

「着いたよ」

玄関先の車寄せに停車。


「雅人様、朱音様お待ちしておりました」

車のエンジンを止める音を訊きつけ、中から別荘の管理を任されている小林夫妻が出て来た。

小林夫妻の旦那様は元「大日本メディカル」の社員。マリンスポーツが趣味で、老後は海の近くで余生を過ごすのが夢だったらしく、相良さんの勧めで別荘の管理人となった。

「昨日の花嫁姿も綺麗だったけど、普通にしていても朱音様は華がある。さすがは結城家の令嬢だ」

小林さんのお世辞を笑顔で訊き流した。

「小林夫妻、お世話になります」

「お荷物お持ち致しますよ」



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