プレシャス~社長と偽りの蜜月~
私はやるせないキモチで雅人の手を両手で握り締める。


雅人の手はこんなにも温かいのに、声を訊くコトも見つめ合うコトも出来ない。


彼の愛しげに私を見つめる瞳が懐かしい。

こうして、彼はこの世に存在している。

私の目の前に居るのに、死よりも残酷かもしれない。


頬を伝う熱い涙が雅人の手の甲に零れ落ちた。一粒二粒、最初は数えていたけど、次第に数えきれない位ポロポロと零れた。


泣き顔でクシャクシャになった情けない顔に自嘲する。


私の両手の平の中で感じる蠢く感覚。


雅人の手から両手を離すと僅かながら彼の指先が動いていた。



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