水晶の探偵
しばらくの沈黙。
本日何度目か分からないため息をつき、晶が沈黙を破った。
「…やっかいな事件。容疑者は?」
「そのためにお前を呼びに来た」
のんきな雰囲気が完全に消えた晶を見て、口を開く。
「三田村さんが、とりあえず今日のパーティーに参加していた家族と、同政党でつながりの強い人たちを集めて、話を聞くらしい。
俺達にも居てほしいそうだが…来るだろ?」
無言でドアを開き、振り返りざまに響を見据える。
「当たり前」
一言だけ言うと廊下に出て案内を促す。
こんな時なのに思わず笑みがこぼれる。
「野暮な質問だな…」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟き、歩きだす。
晶の表情は、すっかり1人の“探偵”になっていた。