躰全部が震えるキス
勢いに釣られ、つい先生の小銭入れを受け取ってしまった私だけど、2分後にはもう後悔していた。

「暑い……暑すぎる」

「ちょ……まだ歩き始めたばっか」

「そうだけどさあ」

どうして、タカノリはそんなに楽しそうなんだろう。

いや、タカノリにとってはこれが年がら年中か。

ふざけてる割に、決めるとこは決めるから、

「来年の試合ではいいとこまで行くんじゃない?」

と先生からの期待も厚い。

暑さで次第に口数が減っていく中、不意にタカノリが私をじっと見た。

「そういえばさ」

「……何?」

「アスミンって、彼氏いるの?」

「だからアスミンは止め……」

それ以上、私は何も言えなかった。

タカノリの表情が、いつもと違って真剣だったから。

なにこれ。

もしかして……そういうこと?



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