恋の人、愛の人。
・恋は…愛は…
「大丈夫か…明日仕事だろうが」

「…うん。…はい。話を聞いた日も、…飲んだ日も、全部間違ってました…。まだ今日は水曜だった…ねえ、陽佑さん、何も持ってない。だけど…部屋に泊まる…いい?」

「いいよ。どうせ、こんな状態じゃ、自分の部屋に帰ったって風呂にも入れないだろ。無事帰るかも心配だ。
明日早めに起きるようにアラームセットしろ。…おい、聞いてるのか?
意識がある内にアラームを…て」

…。はぁ、もう無理か。

大体ここから行ってた時間より最低でも30分。シャワーやら化粧やら入れたら1時間は早めにしてないと駄目だな。
スヌーズもしとくか。

…よし。

「梨薫ちゃん、横にするぞ?…」

もたれさせるように座らせていた足からヒールを脱がせて、ベッドに寝かせた。胸の辺りまで布団を掛けた。

ふぅ…もう泣いてるじゃないか…。はぁ、最悪、無理なら明日は会社は休みだな。

何があったかなんて聞かないよ。“男難”なんて、言えてたくらいの事だったら良かったのにな…。

「…陽佑さん」

上を向いて瞼を閉じていた梨薫ちゃんは、顔を隠すように両手を乗せた。

「大丈夫か…」

頭に触れた。

「はぁ…うん、ごめんなさい。ギムレットがこんなにキツイとは思わなかった」

「何だ…飲んだ事なかったのか」

「うん…初めて飲んだ…はぁ」

キールを飲んで、ギムレットも飲んだ。キツイ…だろうな。『永遠のお別れ』を飲んで、…飲み込んだんだ。

「…陽佑さん…お店は?」

「うん?梨薫ちゃんがカウンターに伏せてる間にしまったよ?」

「あ゙ー、…迷惑かけてしまいましたね、ごめんなさい。ていうか、迷惑かけたくて来たかも…」

「何じゃそりゃ」

「…甘えに来たんです、多分」

「だろうな」

頭を撫でた。…解ってるよ。

「…私の…堪らなく大好きだった人は、私に何も教えてくれないまま…、もう会うことはありませんて、…死んでいました」

…。
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