恋の人、愛の人。
別荘に戻ったら、パスタは作っているのだけど、何だか陽佑さんが無口だった。…解ってる、私が暴走したせいだ。きっとそう。
出来上がって、美味しく頂いた。
夜はデッキでご飯を食べ、満天の星空を眺めた。
時間なんて止まればいいのにと思った。
こんな綺麗な空。夜じゃなきゃ見られない。
夏の星座。…さそり座は赤い星、アンタレスがあるから見つけ易い。
白く流れる天の川から下って来るとさそり座がある。線を引くように目線で辿れば…さそりの形。
寒い季節じゃないからいつまでも見ていられる。

「明日は午前中に帰るけどいいよな?」

「え、あ、はい」

「まだ見てるか?俺は先に風呂に入って寝るから」

「はい」

何気に携帯を手にした。あ、電源、連絡した後、切っちゃったんだった。
電源を入れた。

ブー、ブー、…。わっ、いきなりメール、『ハルちゃん』からのだ。
他にもハルちゃんからのものが沢山。…大変だ。

【部屋に居ないみたいだが、どこにいるんだ。大丈夫なのか】

あ、…。大変。部屋に訪ねて来たんだ。もしかして、休んでしかも部屋に居ない事で、物凄く迷惑を掛けてしまっているんじゃ…。

【すみません大丈夫です。本当に大丈夫です。部屋には居ませんが大丈夫ですから】

【大丈夫なら、声を聞かせてくれ】

…あ。…そうか、…その方が納得できる。
RRRR。

「はい」

「すみません、部長。ご心配を掛けてしまって、大丈夫なんです。本当に元気にしてます」

「朝、会わなかった。課を覗いたら同僚の子が言うには体調不良で休んでると言う。しかも、また直ぐ明日も休むと連絡があったと言う。正直、事実を知って、私のせいで何かあったらどうしようかと思った。…もしやと、心配した。だけど申し訳ない。好きだと言っているくせに、君を必死で探す事が出来なかった。
昼頃部屋を訪ねてみても出なかった。出たくないのかも知れないと思った。私を確認してね。
やっと、また、今来てみたら、また居ないというか、出ない。…はぁ、本当に…妙な事はないな?大丈夫なんだな?」

思いつめて…どうにかなってるんじゃないかと思ったんだ。

「はい、大丈夫です。あの、明日のお昼くらいには帰ってますから」

「…そうか、その言葉、信じているからな。必ず帰って来るって」

「本当に、妙な事は考えていません、大丈夫ですから」

「ああ、解った。本当に、必ず帰ってくるんだぞ?」

「はい。すみませんでした」

「いや、大丈夫と言うなら、私の一方的な鬱陶しいお節介だ。取り敢えず、声が聞けて良かった。安心した……邪魔をして悪かったな。おやすみ」

「はい、すみませんでした、有り難うございました、おやすみなさい」

…はぁ。
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