恋の人、愛の人。
はぁ、…私という人間は…本当、どれだけ中途半端で、人に都合よく甘えているのか…。
「梨薫ちゃん…」
「あ、はい」
ビクッとなった。陽佑さん…後ろにいつから居たんだろう。聞かれてたかな。
「…風呂出たから。好きな時間に好きに入って。お風呂からも海も見えるし、天窓もあるから星も見えるよ。ゆっくり見るのはいいけどうっかり寝ないようにね。
あ、朝は容赦なく起こすからね。じゃあ、おやすみ」
「あ、はい、おやすみなさい」
…変なんじゃなくて、これが普通なんだ。これが普通の接仕方なのよ。…それ以上に、気を悪くさせてしまった。いいと言われたのに、余計な、訳の解らない自己紹介までしてしまって。陽佑さんはして欲しくなかったのに…私は…本当、迂闊に、馬鹿だと思う。
ふぅ…バスタブは広かった。円形で何だか可愛らしい形。
浴室は全体がミルク色だ。
ここは外観もだけど中の造りも何だか全てが基準可愛らしい。…誰かのこだわりで造ったのかな…。そんな感じ。凄く、女の子好みだと思う。
浸かって見上げると、こっちも…天窓も丸くて大きい造り。
はぁ、なるほど、丁度、天の川が綺麗に見える。…幻想的な気持ちになりそう。
縁に手を掛け顎を乗せれば目の高さの窓から夜の海を眺める事が出来る。
こんな大きい窓も、人の目を気にしないで済む高さにあるからだ。明かりを消してキャンドルだけとか、…星がキラキラと際立って見えるだろう。
ずっと見ていたかったけど、きりが無いから程々に切り上げて、二階に上がった。
階段を上がった左側が私の部屋だ。陽佑さんは奥の部屋に居るはずだ。
ベッドに、温冷切り替えのできる小さい冷蔵庫。
確かに宿泊出来る感じとも言える。
南向きに窓があるから、風が潮の香りを運んでくるような気持ちになる。
全くのイメージ先行だけど。
…はぁ。…私はここに溜め息をつきに来たのかな。んー、……はぁ。
少し昼寝をしたから、まだまだ眠れそうにもない。また少し海岸を歩いてみようかな。
ギシ…ギシと階段を下りた。