恋の人、愛の人。
んー、何だか解らないなんて言いながら、…私。…だけど、…何となくって思いながらも、行動はしてる…。言ってる。

…。


RRRRR、RRRRR、…。

「はい!梨薫さん?」

「黒埼君?」

「そうですよ。嬉しいなぁ、梨薫さんから電話なんて」

…。

「もう仕事は終わってる?」

「はい。珍しくもう部屋に帰ってますよ」

「…じゃあ、話せる?」

…。

「大事な事ですか?そうですよね。じゃなきゃ電話なんてわざわざ…」

「…うん、…そう」

もう何か感じ取ってしまったのね。急に電話して、低いトーンで話してるから、…解りやすいよね。

「じゃあ、電話ではしないでください」

…。

「そうよね」

「はい」

…。

「でもね…一言だけなの」

…。

「それでも電話では嫌です」

…よくない事だって思ってるんだ。

「あのね…」

「礼儀だと思います。…最後の。直接、顔を見て言いたくないからでしょうけど。嫌だと言っているのに、話そうとするのは相手に思いやりが無さ過ぎです。俺が聞きに行きますから。部屋に居ますよね?直ぐ行きます」

あ、…。はぁぁ。…私ったら。本当…黒埼君の言う通りだ。決めたら少しでも早く言ってあげないといけないと思って…。本当、私は欠けたところしかない人間なのね…。
黒埼君…、何を言われるのか察してる感じだった。それでも自分から来るって…。



ピンポン。

…来た。…早い。

「…はい」

カチャ。

「一言ですよね、ここで伺います」

…。私はまず凄く酷い事を言おうとしている。

「さぁ…どうぞ、言ってください」

そんな覚悟を決めたような顔で見ないで…。

「梨薫さん、どうぞ?さあ、言ってください」

「黒埼君は…稜の弟なの」

「はい、そうですよ。それじゃないですよね、一言って。回りくどい言い訳はいいですから、どうぞ?…どうぞ」

…。

「弟のように可愛い以上に、好きにはなれないと思うの。ごめんなさい」

「…解ってますよ。そんな事は、兄貴の弟だって梨薫さんが知らない時から解ってる事です。それはもうとうに聞いてます。少しずつ、進展して行くかも知れないから、それでいいって、俺は言いました。…駄目なのは、俺が、稜の弟だからですか?その部分なんですか?」

「…それは…解らない」

「はぁ…解らないって言葉を便利に使わないでください。それは違うでしょ?頭の中にははっきり出てるはずです。いつもいつもその狡さは駄目だ。他の狡さは構わないけど、ここで使うのは駄目です。これははっきり言わないといけない事なんですよ?」

「…私が、黒埼君を好きになる事は…」

「兄貴に悪いと思うからですか」
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