恋の人、愛の人。
「じゃあね」

「え?…え?え゙?」

「フ、嘘よ。もう…直ぐ動揺する。日頃から笑わせようとサービス精神が前に出過ぎるのよ。今はいいから。
ご飯はまだ?だったら、食べて行かない?今から作るから待たせるけど」

「食べます。手伝います。待ちます」

「もう…落ち着いて。とにかく部屋に入ろう?」

「はい。ちょっと待って…」

「な、に…」

あ?…ん゙、こんなところで…。
黒埼君にとって簡単な事だ。手を離しただけで向き合っていたから、そのまま顔を包まれキスをされた。

「…も゙う。したら駄目な事、前提の話だけど、せめて…中に入ってからとかにしないと…また誰か…」

「待てませんよ。ご飯は待ちますから」

「…何、それ…ん゙」

また、された。

「フフン、さあ、部屋に戻りましょう。さあさあ」

後ろから肩を押されて歩いた。

…はぁ、…。こういうの…落差がありそうで、凄く不安だって…思ってしまう。例えばつき合ったらの事だ。
黒埼君は年下相手なら、こんなに、はしゃがないんじゃないの?

つき合って…凄く甘い時期が過ぎて、ある程度経ったらそういった行為も次第に無くなって、放ったらかしにされるとか、…何も無くなるのが、私は寂しいから嫌なんだけど…。
そういうの、言ってどうのというより、感じて欲しいのよね…。
そういう意味で、ずっと甘えたいんだけど…私は若い訳じゃないから簡単に飽きられてしまうかもね…。


「何、作ります?」

「餃子、作ろうか、好きなんでしょ?」

「はい、好きです。梨薫さんの次に好きです」

…。

「じゃあ、生姜焼きは?炊き込みご飯はどうなの?」

「それも、何もかも梨薫さんの次に好きです」

…。

「あのね…。まだ肝心な事、言ってないわよ?私。好きって事は」

「あ。え゙っ?!…そうだ…そうですよね。…あれ?俺、フラれてますよね、確か…」
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