恋の人、愛の人。
「何か、そちらで進展があったのかな?」

「いえ、進展と思うにはあまりにも不安定で…確かなモノではありません。ただ、…解らないけど、実の弟だから駄目だとは思ってないのかなって、事だけですね。だけどそれも…どうだか…。言わないでいてくれているだけのような気もします。まだどんな気持ちも安定してないだろうから。あ、弟とか、その、解ってますよね?」

「…はい、聞いてます。
そうでしょうね。…もう泣かないとか言ってはいますが、それはまだ…。どれだけの強い思いがあったかを考えたら、…いくら年月が経っているからといっても…。掛け替えの無い人だと思っていた訳でしょうから。ショックは強い。
一度で忘れられていたモノに…、やっと忘れた頃に…新しく辛い別れが加わった訳だから。思えば思うほど募る…辛くない訳がないでしょうからね」

「…はい」

「好き、というモノはとても大事な事です。それが無ければ始まりません。でもそればかりでも駄目だ。もっと外から包み込むような、大きなモノも必要だと思います。
直ぐ答えは欲しいでしょうが、もしかしたら、焦りは禁物かも知れませんよ…」

「解ってはいるんですが…はぁ…どうして、…そんなに悠長にしていられるんですか…」

「…内緒ですよ?」

「え?」

「好きだからです」

「え?…え?」

「好きだからこのままで居られてるんです」

好きなのは解る…なのに…どういう風に捉えたらいいんだ。欲しくないのか?

「年齢かな…と言えば理由として解って貰えるだろうか」

また年齢か…。

「確か…27だったかな?」

「は、い」

歳も知ってるのか。

「女性の事が大好きでしょ?あ、勿論、俺だって好きですよ?
なんていうか、綺麗な言葉で言うなら情熱?もろに言うなら、がっつく?…ハハハ。まあ、そういう男の本能的な部分が、ちょっとは我慢の効く大人になってるからかな。
理性は最大限に発動させるけどね?
だって、俺だって男だし、好きな人とは欲しい時は欲しいよね?」

「はい、だと思います。我慢は…中々辛いです」

「フ…。本当に正直なんだな。だから、…解るよ。梨薫ちゃんが君を可愛いって思う気持ち。
駆け引きしない分、若く感じる」

はぁぁ…本当に俺の事、よく話してあるんだな。…つまり俺は青い、アホっぽいって事か。…はぁ。
< 185 / 237 >

この作品をシェア

pagetop