恋の人、愛の人。
【梨っ薫さ〜ん。また、って、格好つけて帰ったけど、ご飯はもう食べましたか?】

【食べたわよ?】

【え゙…ショック!】

【お腹空いたの?】

【はい。ていうか、食べてないです】

【本当は出来る間、どこかで時間を潰してようとか思ったんじゃないの?】

【バレました?】

違うでしょ?そんな帰り方じゃなかったじゃない…。

【どこに居るの?】

【下です】

…はぁ。いきなり、訪問はしなかった訳だ。

【餃子、焼き始めるから上がって来る?】

【はい】

ピンポン。

…あ゙、…もう。始めからそこに居たのね。…フ。

カチャ。

「もう…嘘つきね。何してるの…」

「はい。これが俺の個性ですから。お邪魔します。
…あ、ビール、買って来ました」

「はぁ…用意がいいのね」

ドアを閉めて部屋に入って行く後を追った。


「はい。梨薫さんの分も。それから、梨も。…はい。後で切ってください、あ、冷やしておきます」

梨って…、あの日買い忘れたから。覚えていたのね。

「梨薫さんも、本当はまだ食べてないでしょ?ご飯。
俺が戻って来るかもって、ちょっと思って食べてないでしょ。実は待ってた」

…。

「お。当たりました?
俺って、ちょっと凄いですね。梨薫さんの性格、掴みつつあります」

「……座ってて?直ぐ焼けると思うから」

「あ、はい。…梨薫さん、今日は会社に居なかったんですね」

「うん…。部長の仕事、手伝ってたから」

「へぇ、そんな事もあるんだ」

「ねぇえ、私もびっくり、いきなりだったから」

…。

「梨薫さん…もう、部長に告白されたんですか?」

「…何の告白?」

「…好きだって…告白…」

「…キャ、冷たい!…もう…だるまさんが転んだは駄目だって言ったでしょ…キャ」

考えながら話していた梨薫さんには隙があった。
静かに近付いて首筋に唇を触れさせた。
缶ビールに口を付けていたから冷たくなっていたのだろう。…はぁ。腰に腕を回した。

ん。反対側の首筋にも唇を触れさせた。

「…これは、俺の許された行動だから…」

「あっ。…ん、ちょっと、もう…黒埼君…危ない、止めなさい。火傷するから…許してる訳じゃないわよ…ぁ、こら」

腰に回していた腕を胸まで上げて抱きしめた。だって…。
好きなんだから…しょうがないじゃないですか…。
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