恋の人、愛の人。
翌日、いつも通り出勤したが、部長には会わなかった。…そんな日もあるだろう。毎日一分一秒狂わずに出勤とまではいかない。でも、珍しい事ではあった。
「…武下さん」
「ん、あ、おはよう」
「…おはようございます」
…元気がないのは聞かなくても解った。
「はぁ…」
…桃子ちゃん。
「どっちもいいって、…そういうのとは違うんですよね。…男の人がいいって場合は、女の人には興味も…何も無いんですよね…」
あ、黒埼君のそれ…、嘘なんだけどね…。
「私…友達になってくださいって言えば良かった。ううん、言います。だって、もしそれで友達ならって言って貰えたら、それで…友達にはなれます。それで、私、…そういう気持ちもそのうち無くなって、他の人を好きになれたら…。そうなれたらいいです」
「桃子ちゃん…」
「…無理な人をずっと思い続けていられる程、そういう意味では一途にはなれません。だって無理なんですから。諦めるって事も大事な決断です」
僅かな日数で、もう切り替えたなんて。理由が違っても、私なら無理だ。
「こういう風に誰かに言って聞いて貰うって大事だと思って。話してしまえば、もうそうするしかないって、なりますから。だから武下さんに聞いて貰いました。私、また、プチ告白します。欲張りだけど友達になってくださいって。ハードルを下げたつもりでも、それも駄目って言われたら…、もう何もかもただの職場の後輩ですね。何でもない現状になるだけって事ですね」
…断った理由とか、それは違う理由でも…。断るのだから、どんな事を言ってもいいのか…。
…好きな人が居なくても、好きな人が居るからって言って断る事もよくある。
全部本当の事を言わなくてもいいとは思うけど。
黒埼君の理由は…女の子にとって希望の持てない理由だ。