恋の人、愛の人。

んー。…。余計な事だとは思う。だけど。

【桃子ちゃんの告白を断った理由、…狡い気がする】

いきなり何の前置きもなく送ってしまった。

【今更どうしたんです？何か言われたんでしょ。
では、梨薫さんの事が好きだからと言って断り直します】

…それでいいですかと聞かれているんだ。
黒埼君の断り方を狡いと言った手前、私の事を出して断るのは駄目とは言えない…。これって…どうなんだろう。

【解りました】

どうぞ、と付け加えてないところが私だって狡い。要は、私と桃子ちゃんの関係性を気にしてくれた断り方だったのだろうから。

【好きな人がいる、と言うくらいにしておきますよ。ただ、それは、俺の男友達の事だろうとまた思うだけ、その念押しだと取るだけだと思いますけどね】

【その部分の誤解は解かないの？】

【こういうのって、言えば言う程、払拭されないモノですよ】

そうか…違うんだ違うんだって言われると余計怪しくなっちゃうね…。

【俺に好きだと言われているからって、それがあるからでしょうが。その事でもやもやするのは解ります。でも罪悪感という程では無いでしょ？
梨薫さんと俺が既に内緒でつき合っている訳じゃないですからね】

…そう言われたらそうなんだけど。

【結局、断ったものはもう終わった事なんです】

【ごめん。ごちゃごちゃ言って】

【別にいいですよ。気持ちは解りますから。じゃあ、仕事します】

あ、そうだった、私ったら長々と。

【ごめん】

【いいえ】

…。今、仕事中なのに。

【ごめんね】

【大丈夫ですって、笑】

あ。…。下らないとは言わない…、大事な事だけど、今じゃなくても良かったのよね。…何してるんだろう、私。

【次、メールをしてくれるなら、ご飯の誘いとか、好きよ黒埼君とか？そんなメールをください】

…フ…慰められてる…。

【解りました、とは言わな〜い】

【解りました。では、仕事します】

…はぁぁ。何だか駄目だな…。黒埼君に気遣わせちゃった。