恋の人、愛の人。

夢は夢で間違いないのだろうけど妙に生々しかった。
稜の声も、腕も、確かに聞こえたし感触がはっきりあった。

…稜。何かあったのだろうか。…もう、私が気に掛ける事も、関わるような事も…。してはいけない。よね。
それにしても…知らないところで寝てたからかな。

テレビは放送が終了しているのだろう。弄らなかったら切れる設定になっているのかも知れない。
画面は黒かった。

部屋は物が見える程度に高い位置にある小窓から外の明かりが入っていた。

３時か。…妙な時間に目が覚めてしまった。
お水、貰っていいかな。

開けたバスタオルを直しながら冷蔵庫を覗いた。
んー、やっぱりお水が無難よね。
取り出し、一口、口に含みゆっくり飲んだ。…はぁ。

黒埼君は帰っただろうか。いくら何でも、人の居ない部屋の前にずっと居るのも…はぁ、有り得ない…。

…。

どうして、今、こんな事をするんだろう…。それは言ってもしようがない事か…。
人がいつ誰を好きになって、行動するかなんて、本人にしか解らない事だもんね…。
私達の関係性は、という言い方も変だけど、会社の先輩後輩。仲良くはしてるけど、それ以上、私の中で何かを感じた事は無かった、というか、考えた事が無かった。

部屋を追い出されたと言っていた。
それが本当なら、今まで、そういう関係の人が居るじゃない…。居たと言うべきか。
それなのに、好きだと言うの？
あんな…、うちに来た…口実？…。
…解らない。駄目だって言ってるのに、続けて来ていた感覚もよく解らない。ぁ…泊めてしまったからかな…。キスの写真…ふざけているとも…思えないけど…解らない。
確かに会社での黒埼君は、人懐っこくて、つき合い易いタイプの人間だけど。
…考えてみたことも無かった。そんな気持ちでいたなんて、少しも…私は思っても見なかった。

何故、このタイミングで…急にどうしたっていうのよ。