恋の人、愛の人。
「私達は、どういう風にしてお互いを知り合っていく?」
あぁ…、びっくりした、今、どうするのかと思ってしまった。
「やっぱり会う事や、話す事からってなりますよね」
「そうだな」
「…だからと言って、漠然としか感じられませんよね。
何ていうか、どういう行動をするのか、どんな考え方をする人なんだろうとかって…説明というより、何かあった時とかに強く解る事でもあると思うんですよね。
人となりという物は、説明される物ではなくて相手が感じ取る物ですよね。感覚のような物というか」
「こうして二人で居ても何も解らない。そうなると…黒埼は羨ましいよな…。もうほぼ人柄は解って貰っていると言っても間違いではない。会社に入って五年…。ずっと君と同じフロアに居る訳だし、とても親しい間柄だ…」
「会ってる時間はあまりありませんよ?それにプライベートは全く知りませんよ?連絡を取り合った事も無かったですから。会社でだけのつき合いでしたから」
「…それが、突然部屋に泊める事になった。きっかけは黒埼の方にあったのだけど、好きだから、押しかけて来られた」
「…はい。どうして来ているのか、解らないはずはないのにって…」
…。
「黒埼と…何かあったか迄は知らないが。…どうして私がいつも君の居る場所を知っていたか種明かしをしておくよ」
「え?」
「それは携帯だ。GPSを利用した認識だよ」
「えっ?」
「君が携帯を換えてしまったら無理だったのだが。病気を俺に話した後、稜が何やらしておいたんだ。『武下梨薫』、携帯の番号は登録されていた。
あいつが居なくなったら…君は一人になる。何かあった時に備えてと、稜がしたんだ。住所も…当然知っていた。誤解して欲しくないのは四六時中見張るような事はしていないという事だ。これは君に言ってはいけない事だったんだ。言わずにしていた事は不快にさせてしまうから。
だけど、削除した方がいいだろ?気分のいい物ではないから」
四六時中ではないと言われても何だか気持ちのいい物ではないかな。
「そうですね。私は大丈夫ですから。…まあ、その大丈夫な部分がいつどうなるか解らないからそうされてたんですよね」
「では私の方は削除しておくから」
「はい」
「帰ろうか」
「はい」