恋の人、愛の人。
「何飲む?」
「んー、どうしようかな…」
「じゃあ、適当に」
「お願いします」
「はい、…カカオフィズ」
「有り難うございます」
「…で、どうしたらいいか解らないって。また逆戻りか?どこまで戻ったんだ。
亡くなった彼の思いがまた甦って来たのか?」
グラスを拭いていた。
「そこまでは戻ってはないです」
「じゃあ、何が始まったんだ」
始まった?……ぁ、…そうだ。
「モテ期はいつまでもあると思ったらそれは違う…。気がついたら誰も居なくなってるって事にもなる…」
「ん?そんなの当たり前の事だろ。
遊んで終わり、楽しかった、そんな時は一時だ。結果、誰も居なくなる。反応のない相手といつまでも、先のない事を続けている訳にはいかないからな。男だって馬鹿じゃない、気がつくよ。……いい時って何だ?」
「え?」
「まるで、女のいい時を若くないと駄目だとか言う奴、居るだろ」
「あ、うん、まあ…居ないとは言えないかも」
「それも一つのタイプと言ったらそれまでだけどな。そんな奴は、じゃあ誰かと生涯一緒に居る事は出来ないって事なのか?」
「それは知りませんよ。一応、形だけでも別れずに一緒に居て、陰で浮気とかしたりしてるんじゃないですか?…自分に従ってくれる若い子を見つけて」
「そうだな。…いくらでも、世の中に女は居る」
…。
「俺は、可能な限り、抱くけどな」
「…は。どういう意味…どっちの意味です、それ」
「いや、その反応は取っ替え引っ替えって思ってる顔だ」
「ハハハ…」
…。
「そうじゃない。可能な限り…ジジイになっても、自分を一生の伴侶だと選んでくれた相手だけをという事だ」
…。
「フ。意外って顔だな」
「はい」
「ハハハ。はい、ってな…出会った時から…相手が四十になろうが五十になろうが、それ以上になっても勿論だ。俺が愛しくて堪らなくて一緒に居る人だ。身体が大丈夫なら…抱かない訳がないだろ」
「はぁぁ凄い……情熱的ですね。でも、女の人も、相手がそういう気持ちでいてくれたら嬉しいでしょうね。あぁ、…何だか、愛しい話ですね。何も…出来なくなっても、抱いて眠ってくれそうです」
「そういう事。ま、俺は死ぬまでエロジジイって事だ」
…。もう…どうしてこんな話になったんだっけ。
「俺の“絶倫話”はどうでもいいんだけどな」
……。