恋の人、愛の人。
平気で一緒になんて…私は眠れない。
…いいわ。黒埼君はここで寝たらいいわよ。
私はソファーに寝るから。
回されていた腕をゆっくりと解いて起き上がった。
本当に寝てるのよね?…。腕をついて顔を覗き込んだ。身体の近くでマットが沈んでも微動だにしない。
静かにベッドを降りて布団を掛け直した。
冬じゃないって言っても外でうとうとして風邪でもひいたらどうするのよ…。固いところに座り続けたりして…仕事の疲れもあるだろうに…余計疲れたでしょ。何も…ここまでしなくても…。
スーツだってちゃんと替えて会社に来てるし…追い出されたって言っても、ちゃんとしてるじゃない…。
やっぱり口実?…。追い出されたなんて嘘なんだろう。
横向きになった顔に掛かっていた前髪を退けるように触れた。
黒埼君…、何考えてるの…何してるのよ…。
何も…こんな事しなくても。普通に、好きなら好きって言えばいいじゃない…。
はぁ…。年上をからかうもんじゃないわ…。黒埼君が面倒臭くなるだけよ?…。
こうして毎日来て。それが、今日も居るのかって思わせて、その内、来なかったら来なかったで心配するようになるって…そんな意識付けでもさせるつもり?作戦?
なら駄目よ?もうこんな風に、作戦だろうって考えちゃったから。そもそも…こんな言い方が一番嫌なんだろうけど。
一緒に居ると確かに楽しいけど、…弟みたいに思ってる。そういう好意的な気持ちしかないのよ?
だから、こんな強引な事をされても、恐さというよりどこか可愛いと思ってしまうの、…しようがないなあって。……ごめんね。これが、歳の差というか、年上の私の感情なの。
ソファーに移動した。