恋の人、愛の人。
疲れていたのか、頭がごちゃごちゃしていたせいなのだろうか。
横になったソファーでも、また稜の夢を見た。
…またこの部屋だ。
「梨薫〜?今夜、月が綺麗だぞ〜」
「え?」
「見てみないか?満月だ」
「そうだっけ」
「ああ、ちょっと来て見ろよ」
「うん」
ベランダで夜空を仰いでいた稜の横に並んだ。
「…本当だ、満月だね」
「だろ?雲も無い。よく見える」
稜が肩を抱く。頭を肩に乗せるようにされ更に肩を抱き寄せられた。
「いい雰囲気だな…ちょっと切なくて」
「ん?…フフ、…うん」
稜の身体に腕を回した。
綺麗な白い月…。
「寒くないか…」
「うん、大丈夫」
「そこは、ちょっとって言って、腕を回し直してもっと抱きしめてくれよな?」
顔を覗き込まれた。
「え?あ…そうだね、フフフ。…じゃあ、…ちょっと」
腕を回し直してギュッとした。
「梨薫…」
上向かされた。稜の唇が触れて離れた。頭に手が置かれた。
「…俺は溺愛だな…全然、好きが減らないんだ。増すばかりだ。梨薫…」
向き直って顔を包むと、屈み込むようにして触れた唇は、啄むように軽く触れ、やがて深く熱いモノになった。…凄く感じる。熱も感覚も。
抱きしめられて稜は大きく息を吐いた。
梨薫、可愛くて堪らないのに…そう言って強く抱きしめられた。
…稜?こんな事言うなんて、珍しい…。満月のせい?
ぁ、また映像が暗くなっていく。二人共、暗闇に吸い込まれるように…稜の姿が消えていく。
「…稜、待って………稜!」
呼んだのは私なのか、夢の中の私なのか。身体がびくっとなった。吹き返したような息をした。
寂しい気持ちで目が覚めた。動悸が激しい。…苦しくて切ない。
私は泣いていた。
黒埼君が立って居た。