恋の人、愛の人。
た、大変だ。
奥様は明らかに狼狽えていた。結果として夫に手をあげてしまったからだろう。
当ててしまった手を左手で握っていた。
「…あ。……庇うなんて…やっぱりそうじゃない…。写真だって、上手く誤魔化したつもりだったのでしょうが、あんな…判別が出来ない程、斑にぐしゃぐしゃになっていたから…。余計好都合だったのでしょ?
やはり二人の親密な写真だったのでしょ?…嫌らしい…私にバレたから慌てて清算ですか?」
「君は…、なんて失礼な事を言ってるんだ…いい加減にしないか。馬鹿馬鹿しくて話にならない。解らないのか?関係のない人を庇うのは当たり前じゃないか。私達の事で傷付けていい人ではない」
…部長。まだこんなに思い込んで…冷静に判断出来ない人に、今、説明しても無理だと思う。
一歩、前に出た。
「失礼します…」
パン。
「あ……貴女…何するの!」
奥様は叩かれた頬に手を当てた。
「先日謝っては頂きましたけど…。これで先日の誤解された分と、今の誤解と、部長に対する侮辱の分を相殺させてください。失礼を承知で言います。…ふぅ。
…現在のお二人のご夫婦の状況は知りませんが、仮にも、ご夫婦ですよね?何でもない社員に疑いを持って…貴女は愛している人を信じられないのですか?」
「…あ、愛」
呆気にとられて反論出来ないようだ。
「武下君」
「はい。…あ、え?。あ゙、あ、すみません、私、大変な事をしてしまいました…申し訳ございませんでした、すみません」
我に返った。部長にも奥様にも慌てて頭を深々と下げた。
私の方もどうやら頭に血が上っていたようだ。…だけど、あまりに理不尽だから堪えられなかったんだ。
「いや…いいんだ。
和歌子、誤解じゃない」
……え。今の言葉、どういう意味?確か『誤解じゃない』、て言いましたよね?奥様もその部分に反応したと思う。
「貴仁さん?」
「君は、何にそんなに執着している。別れたいと言い出したのは君の方じゃないか。
私達は、当初から愛のない結婚だとは承知の上の事だっただろ?
元々、寄り添う努力をしようともしないで、奔放にしてきたのは君だろ?
それが…私が知らないとでも思っていたのか?どこぞの誰かと上手くいかなくなったからと、一度は決めた離婚を止めたいとか、もう…いい加減辟易してるんだ。
解らないのか?何もかも、君は自分勝手過ぎやしないか?」
私…この場でずっと聞いていていいのだろうか。
「部長、私、席を外します…」
今更だけどドアに向かおうとした。
「いや、いい。居てくれて構わないよ」
え?
「誰にも知られないように進めている離婚話だから、余計進展しないんだ。…誰かに聞いて貰った方がいい。その方が和歌子も現実味があるだろ?
こうやって私の身辺を探ったところで何も出やしない。…これは手切れ金などではない。そんな物は発生しない。私を不利な立場にしたいのだろ?その上で離婚するならしたい。…残念だったな。
今の今まで女の影なんて私には微塵もないのだから」
これは静かな修羅場、ですよね…。
奥様は明らかに狼狽えていた。結果として夫に手をあげてしまったからだろう。
当ててしまった手を左手で握っていた。
「…あ。……庇うなんて…やっぱりそうじゃない…。写真だって、上手く誤魔化したつもりだったのでしょうが、あんな…判別が出来ない程、斑にぐしゃぐしゃになっていたから…。余計好都合だったのでしょ?
やはり二人の親密な写真だったのでしょ?…嫌らしい…私にバレたから慌てて清算ですか?」
「君は…、なんて失礼な事を言ってるんだ…いい加減にしないか。馬鹿馬鹿しくて話にならない。解らないのか?関係のない人を庇うのは当たり前じゃないか。私達の事で傷付けていい人ではない」
…部長。まだこんなに思い込んで…冷静に判断出来ない人に、今、説明しても無理だと思う。
一歩、前に出た。
「失礼します…」
パン。
「あ……貴女…何するの!」
奥様は叩かれた頬に手を当てた。
「先日謝っては頂きましたけど…。これで先日の誤解された分と、今の誤解と、部長に対する侮辱の分を相殺させてください。失礼を承知で言います。…ふぅ。
…現在のお二人のご夫婦の状況は知りませんが、仮にも、ご夫婦ですよね?何でもない社員に疑いを持って…貴女は愛している人を信じられないのですか?」
「…あ、愛」
呆気にとられて反論出来ないようだ。
「武下君」
「はい。…あ、え?。あ゙、あ、すみません、私、大変な事をしてしまいました…申し訳ございませんでした、すみません」
我に返った。部長にも奥様にも慌てて頭を深々と下げた。
私の方もどうやら頭に血が上っていたようだ。…だけど、あまりに理不尽だから堪えられなかったんだ。
「いや…いいんだ。
和歌子、誤解じゃない」
……え。今の言葉、どういう意味?確か『誤解じゃない』、て言いましたよね?奥様もその部分に反応したと思う。
「貴仁さん?」
「君は、何にそんなに執着している。別れたいと言い出したのは君の方じゃないか。
私達は、当初から愛のない結婚だとは承知の上の事だっただろ?
元々、寄り添う努力をしようともしないで、奔放にしてきたのは君だろ?
それが…私が知らないとでも思っていたのか?どこぞの誰かと上手くいかなくなったからと、一度は決めた離婚を止めたいとか、もう…いい加減辟易してるんだ。
解らないのか?何もかも、君は自分勝手過ぎやしないか?」
私…この場でずっと聞いていていいのだろうか。
「部長、私、席を外します…」
今更だけどドアに向かおうとした。
「いや、いい。居てくれて構わないよ」
え?
「誰にも知られないように進めている離婚話だから、余計進展しないんだ。…誰かに聞いて貰った方がいい。その方が和歌子も現実味があるだろ?
こうやって私の身辺を探ったところで何も出やしない。…これは手切れ金などではない。そんな物は発生しない。私を不利な立場にしたいのだろ?その上で離婚するならしたい。…残念だったな。
今の今まで女の影なんて私には微塵もないのだから」
これは静かな修羅場、ですよね…。