恋の人、愛の人。
「部長さんは、やっぱりあれか?梨薫ちゃんが叩かれそうなのを庇ったみたいになって当たったって感じだったのか?」
「うん、そうです。私の前に咄嗟に出たから…私より背が高いから、顎先を少し指先が掠ったくらいで済んだみたいです。
その代わり、ネイルが当たったみたいだから、ちょっと引っ掻き傷みたいになってました」
フ…まさに女に付けられた傷になったんだな。絆創膏でも貼るのかな。猫に引っ掻かれたとでもいうのかな?フ。
「あー、なんでまた部長室になんか行ったんだ?」
「朝、デスクに封筒が置かれてたんです。開けて確かめたらギフト券が入っていて。部長だって解って。前回の…お詫びだって、それ、高額過ぎるギフト券で。だからそれを返しに行ったんです」
「…なるほどね」
「あんな時って、額って、難しくないですか?ちょっとのお礼の方ならまだしも、お詫びの方になると、金額って…高額になってしまいがちですよね。お詫びって、気持ちの問題だから。だから、余計受け取れないと思って」
「世間一般なら、有り難うございますって、受け取ってたって別に構わないんだろうけどな。でも、…何だか出来なかった」
「うん…そんな物、要らないし。もう済んでる事だから。貰えないです」
「うん、解るよ」
「陽佑さん…」
「ん?」
「また…夢を見たんです」
「彼のか」
「うん…ちょっと、濃いやつ…」
「ふ〜ん。…それは、あれだな。頭が“濃く”なってるんじゃないのか?
どこかでそういうのを求めているとか。何かに触発された、とかさ。最近なにかと“男難”だから?」
「…男難、…そうですよね…ん゙ー…」
求めているってとこは否定しないのか?流したのか?
それとも求めているのか?…心当たりがあるって事、だな。