恋の人、愛の人。

「陽佑さん、では、帰ります」

「あぁ」

…。

「梨薫ちゃん」「陽佑さん…」

先にどうぞと…陽佑さんに譲った。

「ん、まあ、後輩君に限らず、本当にどうしようもなく困ったら電話して来いよ、な?」

「あ、はい。有り難うございます。おやすみなさい」

「ん。ん?そっちの話はいいのか?」

「あーはい、終わりました」

「ん?…あ。…そうか。同じ事だったか。電話、遠慮しなくていいから。気をつけてな」

はぁ、何となく、…うん、ほっとしたかも。
陽佑さん、ちょっとだけいつもと違う感じがしたから。

「はい」



コツコツコツコツと靴音を響かせ、部屋を目指した。

…はぁ。また、ここから人影は見えない。見えていないだけかも知れない。まだ解らない。


…ふぅ。居ない。これから現れるとかは無いのだろうか。
後ろを振り返った。黒埼君曰くだ。
鍵を開けて入る時も気を抜かない。入ったら直ぐ鍵をする、だ。どの口が言ってるんだか…。
周りをもう一度確認して鍵を開けて中に素早く入った。即、鍵をした。
忘れないようにドアガードもした。
はぁ…、これで取り敢えず“砦”になった。
陽佑さんに連絡した。電話を架けて驚かせてはいけないからメールを送った。

【帰りました。居なくて、部屋にも無事入りました。もう大丈夫だと思います。変に気にかけさせてしまってすみませんでした】
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