恋の人、愛の人。


陽佑さんから特に連絡はなかった。
仕事中だからだろう。
こちらの状況が解ればそれでいい事だ。だと思う。


はぁ、何だか自分の部屋なのに落ち着かない…。
居る訳ないのに、バスルームからとか、いきなり現れそうだ、と思ってしまう。
それ程、神出鬼没なイメージが付いてしまった。
今はいなくても、帰って来ている事を確認して訪問されるかも知れない。
気にし過ぎだ。…いつの間にか自惚れも…あるような気がする。
その場合は門前払いしてしまえばいいわけだけど。
とにかく…落ち着かない。
いっその事、明かりを消してしまってはどうだろう。……居留守だ。
それがいいかも知れない。そうしよう。
どうせ後はお風呂に入るだけだ。

奥のベッドルームの小さい明かりだけを点け、部屋の明かりを消した。
奥の部屋だけが仄かに明るい。
こっちはほぼ真っ暗といってもいいくらい、暗くなった。
これでいい、通路に面した窓が明るくなければ居ないと思ってくれるだろう。
来るか来ないか解らない事なのに…。

だから、これが黒埼君の…思う壷だ。
どうしてもこんな風に気にするようになってしまうから。
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