恋の人、愛の人。
「じゃ、じゃあ…。そういう関係の人を、切らしたくない、とか、なの?」

「はぁあ?違いますよ。何言ってるんですか。…追い出されたっていうのは男にです」

……?

「黒埼君…あのね…冷静に聞くけど、黒埼君は、男性も女性も、って人?…その…バイセ…」

…答え辛いかな。

「違いますよ…。俺は、そういうのではなくて、ただ普通に野郎と同居してただけです。友人です。そいつが元々居た部屋で、親戚のマンションらしいんですけどね。部屋数があって広かったから、ルームシェアみたいにして住んでたんです。
それが、…本当、急に彼女が出来たとか言って。いつかはないことではないと思ってはいましたけど。空気読めって感じで、夜になって帰れなくなったんです。
それからは彼女が優先ですよ。だから同居は、基本、解消って方向になって」

「じゃあ、部屋がないのは本当なの?」

「まあ、見つけるまではまだ完全にって事でもないですけど。ま、夜、邪魔をしないようにって感じで。
解らないですよね、つき合いは長続きしないかも知れない。簡単に振られてしまうかも知れないし。
そうなったらっていうのもあります。でも、今は、微妙に不自由かなとは思ってます」

「何だか確かに居るのは気不味い感じはするわよね。今日は居ても大丈夫とか、日によっていきなり居ないでくれ、とか…ね。そういう事でしょ?
そういうの前もって決めておくべきだったわね、同居の取り決め?」

「それです。でも、どっちも彼女は出来そうでもなかったし」

「でも現実は現実よ。だったら、ちゃんと居られる部屋を早く見つけた方がいいじゃない」

「そうですね」

「今はだから、元の部屋というか居た部屋に出入りは出来てるくらいのことなのよね。ちゃんと毎日身なりは調ってるから」

頷いた。

「荷物は置いてますからね。あいつも…好きになったばっかりだから、…連日、連夜って感じで…」

…。御馳走様、…若いわね…。

「じゃあ、今日明日なんて、…というか、昨夜から…追い出しというか、居られない状況?…」

「そういう事になりそうですね」

「あ…何だかごめんね」

「…え?」
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