恋の人、愛の人。


「え、なんで謝るんです?」

「こんな…、突っ込んだ色っぽい話になるなんて思わなくて…、プライベートな事を根掘り葉掘り聞いたみたいになって。しかも顔も赤らめる事もなく、何でもない話みたいに黒埼君の同居人の事情を聞いたり話したりして。…恥も外聞もなく。これじゃあ、ただの下ネタ好きのOLよね」

「いや、そうは思いませんけどね」

「んん……少し寝る?横になる?」

「え?」

「もう朝だし。なんていうか、時間帯でどうのこうのという訳でもないけど。イメージよ、イメージ。夜中とは違うから」

襲われない?

「それは危険は感じないって事ですか?」

「うん…甘い?」

「甘いですね。それに、俺に聞きます?それ。
…まあ、もし寝てもいいって言ってくれてる事が冗談じゃないなら、今は有り難いですけど」

黒埼君は珈琲を飲み干した。

「じゃあ、寝る?あ、先に簡単にシャワーとか使った方がいいでしょ。さっぱりするし、その方が眠れるでしょ?」

「本気で言ってます?」

「え?本気よ?」

「じゃあ本気にしますから。シャワー、使わせてください、それからベッドも」

「いいわよ。じゃあ、…こっちよ」

バスルームに案内した。


「タオル類はここ…。シャンプーなんかは女性用しかないから、匂いとか、甘いかも知れない、それはごめんね。それから…ここに簡易歯ブラシのストックがあるから使いたかったら使って?
あとは…流石に男性用の剃刀はないから、つんつんしたこの薄い髭はそのままになるわね」

黒埼君の顎をぽんぽんと触った。

…。

「こういうとこなんですよ…」

「んー?」

「普段からそうなんですけど、何とも思ってないから…、まるで子供に接するように平気でするんです」

「ん?何…」

「俺は親戚の子供じゃない。れっきとした、健康体の男なんです。成人してる男です」

「う、うん。知ってるけど?」

今更、なに。

「…はぁ」

「ちょっと?顔、少し赤くない?…風邪ひいたんじゃない?」

おでこに手を当てる。

「…熱はないみたいね」

「だから…これ」
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