恋の人、愛の人。


「あ、はいはい。もう出るから。いつまでも解りきっている説明が長かったわよね。ごめんごめん、じゃあシャワーして?」

あ゙ー、もう。

「気があると解っている男を、朝だからといって、ほいほい入れては駄目なんです…」

俺は自分から…こんな事ばっかり言ってるな。

「え゙」

「いいですか?言ってるでしょ?男なんです!毎回毎回、キスだってされてるくせに…。なんでどこか隙ばっかりなんです。危ないでしょ?…だからって、俺の気持ちは気づかないようにしようとしてる」

「あ、それは…」

「簡単に触れないでください」

「え?」

「顔とか…顎に、簡単に触れないでくださいって言ってるんです。爆発した俺を受け止めてくれるんですか?襲いますよ」

バフ。

「わ゙」

顔にシャワーキャップを押し付けられた。多分、何とか伸ばした手に触れた一番近くにあった物だろう。

「そんな風に思うのは黒埼君の勝手でしょ?私はシャワーを使って寝てもいいって言っただけよ。これは親切で言ってるの。今くらい無になりなさいよ、無に。い、今は、邪念は消しなさいよね」

顔に押し付けていたシャワーキャップを取り、強引に頭に被せると出て行った。

…はぁ、…本当にもう…解ってますよ…。どんな風に迫ればいいんだか。
おでこに触れた手を握って、腰を抱き寄せるようにしていたというのに。
振り解いて何でもないみたいに出て行って…。
大体、夜来てるのだって、実際手は出さなくても、邪な気持ちだってあるに決まってるだろうに。…はぁ。


シャワーを借りて、ベッドも借りた。
ベッドはシャワーの間にシーツの交換をしてくれていたようだった。枕もシーツも洗い立ての柔軟剤の匂いがした。
何の苦もなく、俺はすーっと眠りに落ちた。
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