恋の人、愛の人。
……ん?
目が覚めると色んな情報が飛び込んで来た。
あ、あぁ…、これは…、味噌汁の匂いだな。香ばしい匂いもしてる。
…そうだ梨薫さんの部屋に居るんだった。一気に腹が減って来た。
身体を起こした。腕を上げ伸びをした。…はお。よく寝た気がする。
…ん?ベッドの脇に袋があった。コンビニの袋だ。
指で引っかけ、膝の上に乗せ中を覗いた。シャツとパンツが二枚ずつ。靴下も、剃刀もあった。
…梨薫さん。
袋を手にベッドを下りた。
「あ、もう起きたの?いつもこのくらいしか寝ないの?」
梨薫さんはエプロンをしていた。焼き魚を取り出して皿にのせているところだった。
テーブルにはベッドで匂いを感じた味噌汁と、玉子焼き。湯気の上がっている色取り取りの野菜の横に胡麻ドレッシングがあった。
「食べるでしょ?私、食べようと思って、丁度出来たところだったの。
まだ起きないと思ったけど、大丈夫よ。黒埼君の分も作ってあるから直ぐ食べられるわよ」
近づいて後ろから抱きしめた。
「ちょっと…何、黒埼君?……襲っちゃ駄目でしょ?」
手にしていた袋からシャツの入っている袋を取り出して開けると、振り向いて頭から被せられた。
「はい。シャツくらい着て。こんな綺麗な裸は刺激が強い。パンツ一枚でうろつかないの」
腕を通され、下に引き下げられた。
「はい、OKよ。顔、洗ってくる?ついでに髭も剃る?休みだから髭もありか」
今度は正面から抱きしめた。
「も゙う…ちょっと…。これはお礼?」
「そうやって誤魔化さないでくださいよ」
「え?」
「さっきだって、…バスルームで抱き寄せた時だって、今だって、ドキドキしないはずはないんだ。こうして…何でもない振りをして、本当は凄く動揺してるのに」
「…はぁ、…そうよ。動揺しない訳、ないじゃない。健全な男子が何度も抱きしめてるのよ?ドキドキしない訳ないじゃない」
「梨薫さん…じゃあ…」
「あ、待って。勘違いしないで?ドキドキしてるってだけよ?」
「え?は?それ…どういう事です?」