恋の人、愛の人。
「溜まったから先に入って?」
「は〜い」
返事も自然と弾んでしまうなぁ。今夜は梨薫さんが居る。…それがこんなに嬉しい。
浴槽に浸かりながら、ちょっとだけまだ期待している事があった。
違うわよって言われたけど、否定は風呂の事しか言わなかった。だから…。
もしかしたら…だ。いや…期待しない方がいいな、そうだよな。
冗談が言えるくらい元気も取り戻したみたいだし…無いな、無いと思っておこう。
「出ました〜…あれ?ベッドルームかな」
部屋に行ってみた。
「梨薫さん?出ました」
…。
「…はい、有り難う」
ん?何だか…。
「温くなりそうだから早めがいいかと…」
「…うん」
何か、違うな。
「梨薫さん、開けては駄目ですか?」
「駄目よ」
お、…駄目は早かったな。…大丈夫か、な。
リビングに戻った。
いつものように布団を敷いてごろんと横になり、テレビのスポーツ番組を観ていた。
人が通る気配がした。お風呂に行くようだな。
片付けていたツールボックスに入れ忘れた物とかがあって見ていたのかも知れないな。
明かり点けないままで片付けたから。
だとしたら…また思い出していたかも知れない。
「…ふぅ」
出て来たんだ。
「黒埼君、もう寝る?私、珈琲飲むけど」
「じゃあ、俺も飲みます」
「解った、入れるね。あ、こっちに近づいて来ないのよ?」
…。
「解ってます」
「フフフ。そこまで来てたでしょ。…はい。ここに置くね」
テーブルの上に置いてソファーの前に座った。
「俺、変態みたいな事はしてませんから」
隣に座った。
「ん?何?」
「梨薫さんが居ないからって、ベッドに寝てみたりとか…そんな類いの事は…何もしてませんから。誓ってしてないですからね」
「…あ、…そんな事、考えても見なかった。
類いの事って、下着を見るとか?そんな事?」
ブーッ。
「し、してませんよ、そんな事も」
一気に顔が赤くなった。
「…もう、解ってるから。そんな事もしてないって、言い辛そうだったから、私が代わりに言っただけよ…もう、珈琲垂れてるから…はい」
ティッシュを抜き取り、口元を押さえ拭いてくれた。
…し、下着、…。ぁ。