恋の人、愛の人。
部長に抱きしめられても拒絶しないのは嫌じゃないという事だけなのか。…素敵な人だと思っている人だからなのか。…これでは、私はただの男好きになりはしないだろうか…。成り行き任せで…、来るもの拒まず…みたいな。
部長の番号は晴海貴仁と登録しない方がいいのかも知れない。部長というのも駄目だ。と思う。
…もう。…パワハラじゃないと言っても、やっぱり恋愛感情の前に部長という立場の圧はどうしても感じてしまう…。それはいきなりの告白…思いにも影響しているようで…受け身の気持ちだからでもある。
登録名、何にしておこうかな…。今はまだいいか。それよりこのメモをなくさないようにしておく事が先決、大事だ。うっかり落としたでは許されないから。
フロアに戻ると直ぐ桃子ちゃんに声を掛けられた。
「あ、武下さん」
「何?」
「…あっちです。今度は課長が呼んでいます。何だかずっとソワソワしてましたけど」
「そう?有り難う」
「何でしょうかね」
「さあ…何だろうね…」
はぁ、多分…残業した日の事だろうとは思うけど。
「課長、おはようございます」
「あ、ああ。ちょっとこっちにいいかな」
もう…何を聞きたいのかしら。人が代わり、あっちに行ったりこっちに行ったり…。
「残業、すまなかったな」
…やっぱり。
「いいえ、早帰りの日とはいえ、急な事でしたが仕事ですから。何とも思っていません」
少し嫌味っぽくなってしまった。何を今頃思い出したみたいに。部長のところに行っていたのを知っているのかしら…。
まさか…クン…。この、ほんの僅かな残り香が部長の物だと解ったのだろうか。課長はそれ程繊細ではないかな。…失礼か。まあ、こそこそとどこかに行っていたとは思っているだろうけど。
「ところであの日、部長は私の事を何か言ってなかったか?」
「え?いいえ、何も?」
ノー残業デーに仕事をさせた事を余程気にしてるのかな。査定に響くとでも思ったのかな。部長に睨まれたとでも思ったのだろうか。
「君達はその…」
…君達?はあ?
「何でしょうか」
無意識に強めに返事をしていた。
「あ、いや。部長とその、どういった関係なのかと思ってだな…」
関係…そこですか。
「関係も何も…部長と部下以外ありません。言っておきますが、例えば上司に食事をご馳走になってはいけない決まりでもあるんでしょうか」
そのままを言っただけだ。
「いや、そんな事はない…」
立場上、私が課長に強くものを言った事はない。びっくりしているのは見てとれた。後ろに部長が居るとでも思ったのかしら。
「ないですよね。もし課長が御馳走してくれるってなっても私は御馳走になりますよ?(断るけど)お話は以上でしょうか。…あ、あの資料は課長が作った物ですよね?だったらそう言って頂いた方がいいと思います。私は別に何とも思いませんし、間違ったとされた人物が迷惑します。
失礼します」
最初から誰かに任せて作らせておけば良かったのよ。別に完璧にできてない物を課長の物だと言われても何も思わないのに。プライドが邪魔をするのかしら。
も゙うー、…。朝から色々な感情が。あ゙ー、もう…。
「はぁ、桃子ちゃん、私、課長に喧嘩売ったかも知れない」
「ぇえ?なにがあったんですか?大丈夫じゃないですか?課長、自分に非があるのは解ってると思いますから」
…桃子ちゃん?
「内線が架かって来た時、何だか探りを入れるみたいに寄って来たんです、自分の立場を気にしてだと思いますよ。保身です、保身。自分の身が第一なんですよ、きっと。後ろめたいことでもあるんですかね。武下さん、会社ではお姉さんだから、最近部長に呼ばれてるのは、何か自分の様子とか聞かれてるとでも思い込んでるんじゃないですかね」
「あ、桃子ちゃんどうかした?」
私が苛ついてるのは解るけど、桃子ちゃんまで何を…。
「あ、すみません。何だか苛々して。私…嫌いなんですよね、プライベートでもないのに女子社員を下の名前で呼んだりする男性上司。親しみを込めてのつもりでも、一方通行だって気がついてないし。…みんなを同じように呼んでる訳でもないし。あ、でも、呼ばれる人によるかも知れません、勝手ですね、フフ。部長の声だと許しちゃうかもです。私も我が儘ですね」
あ…まあね…、課長を毛嫌いしてしまったって事なのかな…。
「大丈夫よね?セクハラはされてないわよね?
桃子ちゃん可愛いから」
「それは大丈夫です。…有り難うございます」
こう言っては、言った傍からセクハラだけど、どちらかと言えば桃子ちゃんは男好きタイプのようだから。
「うん…はぁ、フフ。仕事しようか」
「はい、フフフ、しましょう」
そういえば、この子の黒埼君への気持ちはどうなってるのかしら…。迂闊には聞けないけど…。…はぁ。
私に敵対するような特別な感情もないって事かしら。桃子ちゃんと私では…横に並びたくはないわね…。そんな女の事だから、特に気にする対象にもならないのかな…。嫌だな…色々自覚させられちゃった。自滅パターンね。
部長の番号は晴海貴仁と登録しない方がいいのかも知れない。部長というのも駄目だ。と思う。
…もう。…パワハラじゃないと言っても、やっぱり恋愛感情の前に部長という立場の圧はどうしても感じてしまう…。それはいきなりの告白…思いにも影響しているようで…受け身の気持ちだからでもある。
登録名、何にしておこうかな…。今はまだいいか。それよりこのメモをなくさないようにしておく事が先決、大事だ。うっかり落としたでは許されないから。
フロアに戻ると直ぐ桃子ちゃんに声を掛けられた。
「あ、武下さん」
「何?」
「…あっちです。今度は課長が呼んでいます。何だかずっとソワソワしてましたけど」
「そう?有り難う」
「何でしょうかね」
「さあ…何だろうね…」
はぁ、多分…残業した日の事だろうとは思うけど。
「課長、おはようございます」
「あ、ああ。ちょっとこっちにいいかな」
もう…何を聞きたいのかしら。人が代わり、あっちに行ったりこっちに行ったり…。
「残業、すまなかったな」
…やっぱり。
「いいえ、早帰りの日とはいえ、急な事でしたが仕事ですから。何とも思っていません」
少し嫌味っぽくなってしまった。何を今頃思い出したみたいに。部長のところに行っていたのを知っているのかしら…。
まさか…クン…。この、ほんの僅かな残り香が部長の物だと解ったのだろうか。課長はそれ程繊細ではないかな。…失礼か。まあ、こそこそとどこかに行っていたとは思っているだろうけど。
「ところであの日、部長は私の事を何か言ってなかったか?」
「え?いいえ、何も?」
ノー残業デーに仕事をさせた事を余程気にしてるのかな。査定に響くとでも思ったのかな。部長に睨まれたとでも思ったのだろうか。
「君達はその…」
…君達?はあ?
「何でしょうか」
無意識に強めに返事をしていた。
「あ、いや。部長とその、どういった関係なのかと思ってだな…」
関係…そこですか。
「関係も何も…部長と部下以外ありません。言っておきますが、例えば上司に食事をご馳走になってはいけない決まりでもあるんでしょうか」
そのままを言っただけだ。
「いや、そんな事はない…」
立場上、私が課長に強くものを言った事はない。びっくりしているのは見てとれた。後ろに部長が居るとでも思ったのかしら。
「ないですよね。もし課長が御馳走してくれるってなっても私は御馳走になりますよ?(断るけど)お話は以上でしょうか。…あ、あの資料は課長が作った物ですよね?だったらそう言って頂いた方がいいと思います。私は別に何とも思いませんし、間違ったとされた人物が迷惑します。
失礼します」
最初から誰かに任せて作らせておけば良かったのよ。別に完璧にできてない物を課長の物だと言われても何も思わないのに。プライドが邪魔をするのかしら。
も゙うー、…。朝から色々な感情が。あ゙ー、もう…。
「はぁ、桃子ちゃん、私、課長に喧嘩売ったかも知れない」
「ぇえ?なにがあったんですか?大丈夫じゃないですか?課長、自分に非があるのは解ってると思いますから」
…桃子ちゃん?
「内線が架かって来た時、何だか探りを入れるみたいに寄って来たんです、自分の立場を気にしてだと思いますよ。保身です、保身。自分の身が第一なんですよ、きっと。後ろめたいことでもあるんですかね。武下さん、会社ではお姉さんだから、最近部長に呼ばれてるのは、何か自分の様子とか聞かれてるとでも思い込んでるんじゃないですかね」
「あ、桃子ちゃんどうかした?」
私が苛ついてるのは解るけど、桃子ちゃんまで何を…。
「あ、すみません。何だか苛々して。私…嫌いなんですよね、プライベートでもないのに女子社員を下の名前で呼んだりする男性上司。親しみを込めてのつもりでも、一方通行だって気がついてないし。…みんなを同じように呼んでる訳でもないし。あ、でも、呼ばれる人によるかも知れません、勝手ですね、フフ。部長の声だと許しちゃうかもです。私も我が儘ですね」
あ…まあね…、課長を毛嫌いしてしまったって事なのかな…。
「大丈夫よね?セクハラはされてないわよね?
桃子ちゃん可愛いから」
「それは大丈夫です。…有り難うございます」
こう言っては、言った傍からセクハラだけど、どちらかと言えば桃子ちゃんは男好きタイプのようだから。
「うん…はぁ、フフ。仕事しようか」
「はい、フフフ、しましょう」
そういえば、この子の黒埼君への気持ちはどうなってるのかしら…。迂闊には聞けないけど…。…はぁ。
私に敵対するような特別な感情もないって事かしら。桃子ちゃんと私では…横に並びたくはないわね…。そんな女の事だから、特に気にする対象にもならないのかな…。嫌だな…色々自覚させられちゃった。自滅パターンね。