恋の人、愛の人。
あ、え…。膝の上の手を取られて握られた。硬くなった。
「…嫌かな…と聞くのも無粋だが、…駄目だったら解いてくれ」
そんな事言われても…。嫌ーっ、とか言って振り解いたりできるものではない。…でも。
「大丈夫です…」
…て、こんな言い方、どうなの?…。
「そうか。では…これは…」
くっと手を引き寄せられて指に部長の唇が触れた。
「あ」
…恥ずかしい。声を出してしまった…。手は…握られたままだ…。
「積極的過ぎて…なにするのよ、このセクハラ部長ー!とかって、思ってるかな…」
「…え?そんな事はないです。…驚いただけです」
あまりにスマートにするから…。
「驚いただけか…」
あ、…。
「驚いたし、ドキドキしてます…」
「ハハハ、言って欲しくて言わせたみたいになったな。…君は勘がいいから、配慮されてしまったな」
「違います、本当にドキドキはしてます。ぁ」
あ、いや、また、変な、あ、とか聞こえたかも知れない。配慮とか…そんな事務的な気持ちではない。なんていうか…部長はドキドキさせるのが上手いのだと思う。と言ったら変な言い方かな…。こんな事…されて、今までの経験で、手は握られた事はあっても、指に唇を触れられたこと、そんなことはないから。
「朝も悪かった…、偉そうに。会えなかったら来てくれとか、命令みたいに。あんな上からな言い方をしては、好きになって貰うどころか、嫌われてしまうな」
「そんな事はないです。そんなに気を遣わないでください」
「有り難う。あ、ここ、今から入るから」
はい…え?……は、い?え゙!?
「ここで、ご飯、つき合ってくれるかな」
「あ、はい。はい、勿論です」
あ、勿論は可笑しいかな…。だって…。でも。…はぁ。ホテルって見てしまうと…私は発想が乏しいなぁ…。ご飯と聞いても、もしかしたら、その後…なんて…。
「ん?あぁ、…何なら、部屋も取ろうか?」
「え゙ー」
見透かされたのかも…。恥ずかしい。
「フ、ハハハ。冗談だよ。ご飯だけだから安心して」
はあぁぁ…、何だか薮蛇な気がする…。絶対、私がホテルを見てそっちを想像したとバレたから言われた気がする。はぁ…、年上は侮れませんよね。