君がいた冬
光と影、陰と光
前のエピソード――第10話
第11話
週末。
旅人達が白川さんの家に集まった。
それぞれが酒を飲んだりジンギスカンを食べたり談笑して過ごした。
少し遅れて賀代が数人の旅人と一緒に入ってきた。
賀代の住む町にはスキー場があり、そこでアルバイトをしながら"越冬"をする旅人が多い。
多分、そのような旅人達と車を乗り合わせて来たのだろう。
僕は電話での曇るような会話を払拭するように
「やあ、賀代ちゃん!」
と、出来る限りの軽薄さであいさつをした。
「あ、シン君もいたんやね」
まるで電話の続きのような冷淡さで答えた。
僕が何か賀代の気に障るような事をしただろうか?
いくら思い出そうとしても全く心当たりがなかった。
「せっかく来たんだから、楽しんでね。」
それは賀代に向けた言葉だったのか、自分に向けた言葉だったのか。
僕は白川さんや鹿島さんや野村さんのような既知の人達と旅の話やアウトドアの話をして気楽に過ごすことにした。
さらに遅れて、戸崎さんが来た。
「やあ、みんな元気だったか!」
「イェーイ!」
戸崎さんが来ると、場の雰囲気はいっそう盛り上がった。
白川さん達と酒を飲みながらも、やはり賀代のことが少し気になって、チラチラと見てしまう。
賀代は戸崎さんと何か楽しそうに話していた。
今度戸崎さんに賀代がどんな性格なのか聞いてみようか?
いや、まだそんなことを聞く段階でもないだろう。
そもそもスタートラインにすら立ってないじゃないか。
それどころか、賀代と温泉に行ったのは理想と妄想が交錯した白昼夢だったのではないか?
結局、大勢の中にあっても、心の中は賀代のことが巡り巡っているのだった。