君がいた冬
第5話
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第5話
札幌に帰ってからの1週間は、とてつもなく長く感じられた。
賀代と温泉に行くのが待ち遠しかったというのもあるが、それだけではない。
無職だからだ。
やることがないというのは、それだけで時間を持て余してしまう。
かと言って、仕事を探すこともしなかった。
まだ少しばかりのカネがあったから。
朝起きると朝飯を食べる。
午前中は少しクルマを乗り回しながら昼飯は何を食べようか考える。
昼飯を買って帰り、「笑っていいとも」を見ながらそれを食べる。
その流れで「ごきげんよう」を見たあと昼ドラを見る。
テレビをダラダラと見るということが、僕にはことさら新鮮な事に思えた。
東京での仕事はいつも忙しく、テレビを見る暇など全くなかったからだ。
ダラダラとテレビを見てると、たまたまニュースを見ることもある。
「銀行破綻、か。もう世も末だな。」
世間はバブル崩壊後、経済が大変だとか言っている。
人々はみんな、うなだれて暮らしている。
そんな中、昼間からゴロゴロしながらテレビを見るのは何とも言えぬ背徳感があるにはあったが、それも悪い気はしなかった。
無職になってから、どうしようもなく爛れた日々を過ごしていたが、今日は「いいとも」も「ごきげんよう」も見ないで洗車をしたり、クルマの中を綺麗に掃除したりして過ごした。