【短編】弱った君が愛おしい


「…なに」


不機嫌極まりないその声と眉間に寄ったシワは、こんな時に起こしやがって殺す気か、なんて言いたそうだ。


「ママに頼まれて。お見舞い」


私はそう言って、スーパーの袋を上げてみせる。


「……」


礼ぐらい言えよバカちんが。


翔吾は黙ったまま、扉をさっきよりも大きく開けて「入れ」と言ってるよう。


「アイス溶けるから早く入れて」


「……くそ」


病人翔吾の横を通りすぎて靴を脱ぐとボソッと翔吾がそう言った。


うぉ。風邪引いてても口は元気だな。


翔吾が二階の自分の部屋に戻ったのを見送って、私はキッチンにある冷蔵庫に買ってきたものを入れていく。


とりあえず、飲み物とゼリーくらい持ってくか。


そう思って、慣れた手つきで食器棚からコップとスプーンを取り出す。


小さい頃から出入りしてるこの家のことは自分の家のようにどこになにがあるかを把握している。


トレイに飲み物とゼリーを乗せてから、翔吾のいる部屋に向かった。





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