【短編】弱った君が愛おしい
「熱は?」
「8.5℃」
「高熱やんけ。気分は?」
「…ぅぅ、だりぃ」
うひょ。
そう言いながら薄め目でこちらをみた翔吾の瞳が潤んでいて。
ちょっと、いや、かなりびっくりして、そしてほんの少し萌えた。
可愛いところ、たまにはあるじゃん。
「…つーか、てめぇのせいで余計だわ」
無理して喋んなくていいのに。
わざわざ口開くのなんなのさ。
って言うかなんで私のせいよ。
こっちはお見舞い持ってきてやってんだぞ。
色々言い返したかったけど、今はかなり弱ってるし、我慢してあげた。
治ったら覚えとけ。
「飲み物持ってきたけど、飲む?りんごジュースとスポーツドリンクと…」
「いい」
あ?
人がせっかく買ってきてやったって言うのによ!
「じゃあゼリーは?」
飲み物が無理なら余計無理じゃないかとも思ったけど、一応聞いて見た。
「…それは食べられる」
マジかよ。
「はいよ」
私はそう返事をして、ゼリーの蓋を開けてスプーンを持つ。
あ、れ?
この人、全然体を起こす気なさそう。
いや、起きられないのかもしれないけど。
てっきり、体をだるそうに起こした翔吾にゼリーとスプーン渡す気満々だったよ。