秘め恋
アオイに過去を知られてしまった今、マサも自分のことで精一杯だった。
イクトに償いたい気持ちはあるが、今後もイクトから同じような攻撃を何度も受けるのはきつい。アオイを好きになったことでこちらの心構えも変わったのだ。
手がかりはユミが持っている。とはいえ、これ以上彼女に尋ねてもはぐらかれそうだ。それにユミはイクトとの付き合いがきついとは言ったが、彼を嫌いにはなっていない。好きだからこそ現実逃避でマサを誘ったとも取れる。どう問いかけたらもっと情報を引き出せるのだろうか。
マサが思案しているところへ、ユミはそっけなく言った。
「それよりさー、イクトとアオイちゃん二人きりにしといて大丈夫? 私が出てくる時、二人かなりいい雰囲気だったけど」
「そうなの?」
嫌な予感が的中した。初めてアオイを紹介した時、イクトは明らかに驚いていた。ユミがいるのでまさかとは思ったが、今思えばあの時イクトの目はたしかに輝いていた。好みの異性を見つけた男の表情と言ってもいい。
もしかして、イクトの目的は……!
マサの中に、最も最悪な憶測が浮かんだ。
独り身の俺に恥をかかせるためじゃない。イクトがこの海イベントに俺を誘った目的は、俺の彼女つまり好きな人を奪うこと。そのためのリサーチの場を設けたにすぎない……!
ユミがダミーなら合点がいく。ユミがアオイとイクトを二人きりにさせてこちらへ来たのも、イクトの目標達成に必要なこと。
「同盟ってそういうことね……」
低い声でつぶやき、マサは来た道を駆け出した。イクトがアオイに変なことをしていないか、途端に心配になった。元親友として疑いたくはないが、あれだけ自分を恨んでいるイクトならアオイに何をしてもおかしくない。唯一安心できる点があるとしたら、アオイが旦那一筋なことか。
でも、やっぱり嫌だ。アオイが他の男と仲良くなるなんて!
旦那は別だ。どうあがいてもアオイから旦那の存在は切り離せない。それなら、旦那の次に彼女のそばにいるのは自分がいい。